りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ヘビメタ中年!(荒木源)

イメージ 1

東京近郊の架空の町・梅ヶ丘を舞台とする音楽小説オケ老人!の姉妹作です。この町には、「ヘビメタ中年」も住んでいたのです。

高校時代に結成したヘビメタバンドの「ブラッククロウ」を、30年ぶりに再結成したメンバーは、皆揃って53歳。週に一度は練習して、何カ月かおきにライブハウスに出ているメンバーたちに、不可解な事件が相次いで起こります。

市民病院のドクターでヴォーカルの江波は、ヘビメタ姿の写真を見せられた患者から手術拒否。カーディーラーの店長をしているギターの岩崎は、妻子にも隠していたカツラの事実が流出。家業の魚屋を継いだベースの吉川は、組合で予定していた魚祭りの日にアイドルの公演をぶつけられて大苦戦。文具メーカーの経理をしているバツイチドラマーの久米は、付き合い始めた恋人に打ち明けられないでいる要介護の母親の存在をバラされてしまいます。

それぞれロック魂でピンチを乗り切ったものの、一見バラバラに見える事件の背後には同一人物がいるようなのです。果たして彼らに悪意を抱く者とは誰で、その目的とは何なのでしょうか。トラブルと言ってもそれほどシリアスなものではなく、あまりヒネリも効いていないのですが、中年過ぎての人生の悲哀を味わえる作品に仕上がっています。

オケ老人!』の登場人物たちが、江波の患者や久米の相談相手などの役割でチョコチョコ登場してくるのは楽しいですね。映画で杏さんが好演していたために、小説の主人公が男性であったことを忘れていました。

2018/5