りぼんの読書ノート

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女たちのニューヨーク(エリザベス・ギルバート)

短編集『巡礼者たち』や、ジュリア・ロバーツ主演で映画化されたエッセイ『食べて、祈って、恋をして』の著者が、古巣のニューヨークを舞台に描いた長編大作です。世界大戦前後のニューヨークのショービジネス界を舞台にして、新しい生き方を目指した女性像が見事に描かれた本書は、深い内容を含んだ作品でした。

 

アメリカが参戦か非戦かに揺れていた1940年の初夏、19歳のヴィヴィアンはニューヨークのグランドセントラル駅に降り立ちます。名門女子大を退学になったヴィヴィアンに失望した両親は、一族のはぐれ者としいて老朽化した劇場を経営している叔母のペグに彼女を託したのでした。吹き溜まりのような劇場ながら、粋で艶やかなショーガールたちに憧れたヴィヴィアンは、彼女の唯一の武器である衣装制作の腕で彼女たちに受け入れられ、奔放な生活をおくるようになっていきます。しかしその結果、戦災によってイギリスから流れ着いき、豪華レビューを大ヒットさせた大女優エドナの逆鱗に触れる大スキャンダル事件を起こしてしまうのでした。

 

ニューヨークから「追放」されたヴィヴィアンは、尊敬する一流人物たちからの否定、尊敬する兄の怒り、兄の友人からの罵倒、両親の無関心、田舎者の青年との婚約と出征による婚約破棄を経て、ニューヨークに戻ります。かつて平凡で愚かな女の子にすぎなかった彼女は、恋人も友達も居場所も失った後で、どのように自分と向き合い、ニューヨークでどのような人生を掴み取るのでしょう。

 

本書は、年老いたヴィヴィアンが、アンジェラなる女性に書いた手紙という体裁で綴られています。ラストで明らかになる2人の関係にも驚かされますが、本書の主題は「新しい時代の女性の生き方」にほかなりません。そして生き生きと描かれる戦争前後のニューヨークこそ、そのテーマにふさわしい舞台であることは間違いありませんね。豊穣な人生とは、強い意思と多彩な人間関係によって形作られるものなのでしょう。本書が大ヒット作となったことは頷けます。

 

2023/6