りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2023/3 Best 3

1.ホットミルク(デボラ・レヴィ)

25歳の女性ソフィアは、大学を中退して我儘な母親の介護に尽くすだけの生活をおくっており、自分自身の人生をどこかへ置き去りにしてしまったよう。そんなソフィアは、母親の治療のために訪れたスペインの海辺の町で変わることができるのでしょうか。母親が医師の尽力によって自分の病の正体に気付こうとしている一方で、ソフィアは自分を覆っている本当の痛みに向き合うために、母親と別れた父親が新しい家庭を築いているギリシャへと向かうのですが・・。さまざなな神話をモチーフとしながら描かれる人間関係や社会問題に対する疑問や反抗が、底流に流れている作品です。

 

2.スタッフロール(深緑野分)

「2001年宇宙の旅」で飛躍した特殊造形技術の黎明期のハリウッドに生きたマチルダと、現代のロンドンで最先端のCGクリエイターとして生きるヴィヴィアンという2人の女性の物語が、時を超えて結びつきます。映画に情熱を燃やす彼女たちの葛藤は、夢に手が届きそうで届かないもどかしさだけではありません。映画のエンドロールに名前が載せてもらえないことや、アカデミー賞を逸したことなどの世俗的な悩みも大きな比重を占めているのです。に拘り続けています。3回も直木賞候補となりながら受賞を逃し続けている著者の屈託は、本書によって昇華されたのでしょうか。

 

3.らんたん(柚木麻子)

著者の母校である恵泉女学園創立者、河井道をモデルにした渾身の作品です。「女性の偉人伝はなかなかエンタメまで降りてこない」と語る著者は、「河井道の生き方があまりに面白くて、ぜひ楽しい小説にしたいと思った」とのこと。本書は、河合道と生涯に渡るシスターフッドの関係を結んだ一色ゆりとの関係を軸にしつつ、彼女と交流があった当時の有名人が数多く登場する大河小説となりました。タイトルは恵泉の卒業生が在校生にランタンを手渡すという伝統から採られています。

 

【次点】

・ウィーンの密使(藤本ひとみ

 

【その他今月読んだ本】

・雲州下屋敷の幽霊(谷津矢車)

・ヴィネガー・ガール(アン・タイラー

・図書館司書と不死の猫(リン・トラス)

モナドの領域(筒井康隆

・ルパンの娘(横関大)

東山魁夷画文集3 風景との対話(東山魁夷

・まるまるの毬(西條奈加

・フォレスト・ダーク(ニコール・クラウス

・幻想遊園地(堀川アサコ

・マーダーボット・ダイアリー 上(マーサ・ウェルズ)

・マーダーボット・ダイアリー 下(マーサ・ウェルズ)

・チンギス紀 12(北方謙三

・チンギス紀 13(北方謙三

・チンギス紀 14(北方謙三

・くさまくら(篠綾子)

・プラスチックの恋人(山本弘

・海神の島(池上永一

 

2023/3/30