1.ブルシット・ジョブ(デヴィッド・グレーバー)
「ブルシット・ジョブ」とは著者の造語のようで、役立たないにもかかわらずそれを自覚して従事する仕事について名付けたもの。広報、ロビイスト、顧問弁護士、コンプライアンス担当者、中間管理職などの、なくなっても差し支えない仕事がなぜ際限なく増殖し続けているのでしょう。そして社会に不可欠なエッセンシャルワーカーの仕事はなぜ低賃金なのでしょう。著者が「ベーシック・インカム」という驚くべき政策提言に至るまでの考察過程も丁寧に解説されています。
2. 宇宙(そら)へ(メアリ・ロビネット・コワル)
1952年に落下した巨大隕石が加速度的な温暖化をもたらし、ついには地球が人生存に適さなくなると予言された世界線。人類の生存を賭けた宇宙開発計画が始まりますが、いきなり超工学が誕生することなどありえません。女性差別が当然であった時代に星々を目指した女性パイロットたちの戦いを描いた本書は、映画「ドリーム」や『ロケットガールの誕生』と共通するリアリスティックな物語です。
3. ラグタイム(E・L・ドクトロウ)
アメリカにおける20世紀初めから第1次世界大戦までの20年ほどの期間を、著者は「ラグタイム」と名付けました。おびただしい数の実在人物が浮かんでは消えていく中で、著者の創作による3つの家族の姿を描いた本書は、ラグタイムのリズムに乗せてひとつの時代を描き切っています。
【その他今月読んだ本】
・彼女たちが眠る家(原田ひ香)
・鬼神の如く(葉室麟)
・じい散歩(藤野千夜)
・スキマワラシ(恩田陸)
・名残の花(澤田瞳子)
・チンギス紀 9(北方謙三)
・宇宙の春(ケン・リュウ)
・春燈(宮尾登美子)
・わが殿(畠中恵)
・最終飛行(佐藤賢一)
・涼子点景1964(森谷明子)
・犬と負け犬(ジョン・ファンテ)
・すべての小さきもののために(ウォーカー・ハミルトン)
・あきない世傳 金と銀9 淵泉篇(高田郁)
・ローンガール・ハードボイルド(コートニー・サマーズ)
・ベイカー街の女たち(ミシェル・バークビイ)
・ベイカー街の女たちと幽霊少年団(ミシェル・バークビイ)
・菊亭八百善の人びと(宮尾登美子)
・STORY OF UJI(林真理子)
2021/9/30