りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

あのこは美人(フランシス・チャ)

著者は、中学・高校期を韓国で過ごした韓国系アメリカ人女性。著者自身の経験も基にして書かれた本書は、現代ソウルに生きる若くて美しい韓国人女性たちの日常を綴ったトレンディドラマです。もっとも美貌や才能に恵まれた女性であっても、平均以下の階層に生まれた彼女たちの未来は決して明るくはありません。彼女たちのドラマは、美容整形、階級差、女性蔑視、学歴主義、貧困などの社会問題と結びついているのです。

 

アラは20代前半の美容師ですが、郷里で巻き込まれた事件以来、声を出すことができません。彼女の心の糧はK―POPの人気アイドルを推すことですが、やがてその推しメンから手ひどい仕打ちを受けてしまいます。アラと向かいの部屋に住むキュリは、整形で手に入れた美貌を武器にしてトップクラスのキャバレーの人気嬢。しかし彼女は、プライベートな関係もある得意客の婚約話に動揺してとんでもない行動に出てしまいます。

 

アラとは中学時代からの親友でネイリストのスジンは、キュリに憧れています。キャバ嬢への転身をもくろんで大掛かりな整形手術に踏み来るのですが・・。孤児院でスジンと一緒に育ったミホは、奨学金を受給してニューヨークで学んだ後に帰国した新進アーティスト。生まれつき美しい容姿に恵まれ、財閥の御曹司と交際しているミホは勝ち組のようですが、物事はそう簡単ではありません。

 

著者は、整形で手に入れた美貌を否定しているわけではありません。家柄も財産も持たない若い女性にとって、美貌もまた生きていくための武器のひとつにすぎないのでしょう。その武器をほかの何かに言い換えても、テーマは揺るがないのかもしれません。訳者は本書を、中国系アメリカ移民女性たちの交流を描いた『ジョイ・ラック・クラブ』に例えていますが、そこまではちょっと・・。

 

2022/10