りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014/1 こうしてお前は彼女にフラれる(ジュノ・ディアス)

1月の上位には自伝的な作品が並びました。どちらの作品からも、「書かれるべきもの」に対する著者の強い思いが感じ取れます。

諸説あり長年論争となっていた、鴎外の「舞姫」のモデルの人物同定を成し遂げた六草さんの探索は感動的でした。次作『それからのエリス』ではついに写真まで入手!

1.こうしてお前は彼女にフラれる(ジュノ・ディアス)
米国で成功したドミニカ移民の息子という主人公ユニオールは、著者自身と重なります。なぜいつも彼は、女性関係をだいなしにしてしまうのか、ネガティブな言葉がイヤというほど飛び交います。デビュー作『ハイウェイとゴミ溜め』も前作『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』も含めた全ての作品が、著者自身の人生をモザイク状に綴っていくためのものとのこと。おそろしく寡作である著者は、いつになったら長い長い著作の全体像を明らかにできるのでしょう。

2.名もなき人たちのテーブル(マイケル・オンダーチェ)
11歳の少年マイナが経験した、故国スリランカから母が待つイギリスへの3週間の船旅は、少年を大人へと変貌させる旅となりました。2等船客の少年があてがわれた食堂の席は、「Cat's Table」と呼ばれる船長から遠く離れた末席でしたが、「面白いこと、有意義なことは、たいてい、何の権力もない場所でひっそりと起こるものなの」なのです。

3.二人のガスコン(佐藤賢一)
三銃士』のダルタニャンと、従妹ロクサーヌに純愛を捧げる戯曲で有名なシラノ・ドゥ・ベルジュラック。同時代の実在人物をモデルとした小説で有名な2人を競演させて、ルイ14世の出生の秘密を追う冒険物語は痛快です。デュマの物語とは異なる解釈ですが、史実や当時の噂を巧みに取り入れ、細部までよくできています。再読ながらランク・イン。



2014/1/31