りぼんの読書ノート

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銀翼のイカロス(池井戸潤)

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半沢直樹シリーズ第4弾」は、民主党の政権奪取直後の「JAL再生タスクフォース」を背景とした物語でした。

営業第二部次長となった半沢は、頭取命令によって、業績の悪化した帝国航空の再建を任されます。しかし、新政権のもとで発足したタスクフォースは、銀行に対して頭ごなしに、500億円もの債権放棄を求めてくるのです。理不尽な要求を敢然と拒絶した半沢に対して、債権管理を担当する紀本常務は、なぜか債権放棄を受け入れようと画策。その裏には、過去の不正融資事件があったのでした。

一方では、選挙での勝利を背景にメガバンクを悪玉に仕立て、人気取りのような素人政策の実行を迫る政治家。もう一方では、過去のコンプライアンス違反を秘匿して保身に走るバンカー。両者からスケープゴートに仕立て上げられそうになった半沢の「倍返し」は、大迫力です。

しかし、ここまで問題が大きくなってしまうと、「拍手喝采してハッピーエンド」というわけにはいきません。合併によって誕生したメガバンクにおいて、誰よりも行内融和に心血を注いだ人物も、引退に追いこまれてしまいます。このシリーズの人気を支えているのは、主人公が悪事を暴く大活躍ぶりよりも、青臭くても「理想のバンカー像」を追い求める、著者の執筆姿勢のように思えます。

続編の有無が気になりますが、このシリーズも本書でひとつの区切りに達したのではないでしょうか。それとも「島耕作シリーズ」のように、半沢直樹が頭取になるまで続くのでしょうか?

2015/6