りぼんの読書ノート

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ミス・エルズワースと不機嫌な隣人(メアリ・ロビネット・コワル)

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19世紀初めのイングランド。ジョージ4世が即位前に摂政を務めていた1810年代を代表する英文学作家といえば、ジェーン・オースティン。来年からは、10ポンド札の肖像画にもなるようです。

本書は、『高慢と偏見』を下敷きにして、「魔術」という添加剤を加えた作品です。といっても、本書に登場する「魔術」は、物語の性格を一変させてしまうような激しいものではなく、「女性のたしなみ」程度のもの。だから、高慢と偏見とゾンビのようなホラーでも、ドラゴンがいっぱい!のような異世界小説でも、アレクシア女史シリーズのようなスチームパンクでもありません。

中級貴族の長女で、魔術の才があるもののハイミスになりつつあるジェーンは、結婚相手探しに夢中な美貌の妹メロディに振りまわされてばかり。そんなときジェーンは舞踏会で、独身高級貴族のダンカーク氏と、雇われ魔術師のヴィンセントと出合います。無愛想で気難しい2人の印象は、ある事件をきっかけに変わっていくのでした・・。

ジェーン・オースティンの雰囲気は上手に再現されていますが、どうせパロディならもっとパンチを利かせて、別のテーマの作品にして欲しいものです。どうやら「幻想の英国年代記」というシリーズの第1作のようですが、もっと「魔術で幻を織る力」を前面に押し出さないと、読み続けるのはきついかな。

2015/6