本書は、『高慢と偏見』を下敷きにして、「魔術」という添加剤を加えた作品です。といっても、本書に登場する「魔術」は、物語の性格を一変させてしまうような激しいものではなく、「女性のたしなみ」程度のもの。だから、『高慢と偏見とゾンビ』のようなホラーでも、『ドラゴンがいっぱい!』のような異世界小説でも、『アレクシア女史シリーズ』のようなスチームパンクでもありません。
中級貴族の長女で、魔術の才があるもののハイミスになりつつあるジェーンは、結婚相手探しに夢中な美貌の妹メロディに振りまわされてばかり。そんなときジェーンは舞踏会で、独身高級貴族のダンカーク氏と、雇われ魔術師のヴィンセントと出合います。無愛想で気難しい2人の印象は、ある事件をきっかけに変わっていくのでした・・。
ジェーン・オースティンの雰囲気は上手に再現されていますが、どうせパロディならもっとパンチを利かせて、別のテーマの作品にして欲しいものです。どうやら「幻想の英国年代記」というシリーズの第1作のようですが、もっと「魔術で幻を織る力」を前面に押し出さないと、読み続けるのはきついかな。
2015/6