りぼんの読書ノート

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隠蔽捜査3 疑心(今野敏)

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「合理主義の権化」であり、人並みの人間性を持ち合わせていないキャリア警察官の竜崎伸也を主人公とするシリーズ第3作。

第1作での息子の不祥事によって大森署署長に左遷されている竜崎は、異例の任命で米大統領訪日の方面警備本部長となります。自分のほうが年次も階級も上であるのに現在は自分の上司となっている方面本部長をサブとするやりにくさもさることながら、大統領専用機の到着する羽田空港をも守備範囲に含むのですから、重責です。

テロ情報を入手したシークレット・サービスからは、羽田空港を閉鎖せよとの要求が入りますが、責任を避けるのが巧みな日本の官僚組織は、閉鎖は不可能としておいて閉鎖判断権限を竜崎に与えます。このあたり、手品を見るように巧みです(笑)。

異例の任命の理由は、組織内異端児の竜崎に失点を稼がせて追い落とす陰謀であるとも噂されるなか、彼に残された道はテロ実行犯を事前に逮捕することしかありません。果たして・・。

というストーリーですが、本書の一番のポイントは、竜崎の年甲斐もない「恋」ですね。秘書として派遣された娘ほども年の違う女性キャリアに対して、思春期の青年のように胸キュンしちゃうんです。こればかりは「合理主義」では解決しませんから厄介です。果たして・・。

このシリーズの魅力は、人一倍優れた能力を有して、いい年齢になっている主人公が、「いまさら」と思うようなことで「いまさら」人間的に成長していくというギャップのおかしさにあるんですね。ですから「恋愛」というのは彼が通り抜けなくてはならない関門なのでしょうが、すでに妻子ある身ですからね~。

「竜崎流の解決」があまりいい解決方法に思えないのが惜しいけど、制約も多い中では仕方ありません。でも、年甲斐もなく若い女性に恋心を抱いてしまったオジサマ方は、自分からは声をかけられず、相手から誘われるのを密かに待っているのでしょうか? それはそれで怖い話です。

2010/11



【隠蔽捜査シリーズ】
・隠蔽捜査
・隠蔽捜査2 果断