りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

妻という名の魔女たち(フリッツ・ライバー)

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公私ともに順風満帆な生活を送ってきた大学教授のノーマンは、最愛の妻タンジイの部屋で魔術道具を見つけます。科学者としては迷信に捉われているような妻の行為は認めがたいもの。妻を叱って全てを棄てさせのですが、それを境にノーマンの生活は不運にさらされてしまいます。あの品々は、彼の身を守ってくれていたのでしょうか・・。

妻たちにとっては全てが明白なのです。タンジイは「ちょっとした魔術で大事な人の身を守ることは、大昔からの女の心得」と言いますし、ノーマンを妬む同僚や上司の妻たちが黒魔術を仕掛けたことも一目瞭然。

でもノーマンも、同僚や上司も、男たちはのん気なもの。ノーマンはすべてが終わった後も、「すべては妻たちの妄想に過ぎないのか、ぼくにはさっぱりわからない」などと言っていますし、同僚や上司も自分の妻の魔術的行為は全く知らないんですね。しかもノーマンにとっては、妻が呪いを引き受けてくれたため、自分には最悪のことは降りかからなかったわけですし、妻が魂を失うはめに陥ったことを「精神的ショック」なんて言葉で片付けようとするのですから。

でもまあ、すれ違いを乗り越えて「愛が全てを救った」のですから、ヨシとしましょう。「女性の現実」と「男性の理性」の対比を、「魔術と科学」の関係と二重写しにした点が楽しい作品でした。跳躍者の時空に収められた短編「骨のダイスを転がそう」と似たテーマですね。そちらで「女性の現実」に対比させられたのは「男のロマン」でしたけど。^^

2010/11