りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ゲームセットにはまだ早い(須賀しのぶ)

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流血女神伝シリーズ芙蓉千里シリーズの著者による「普通の小説」ですが、どうも普通すぎたようです。

舞台はアマチュア野球のクラブチーム。業績不振に陥った企業が次々と実業団チームを閉鎖しつつある中でも、両者の実力差は歴然としています。大企業の支援が約束されていないクラブチームでは、地域のスポンサー探しや練習環境の整備から始めないといけないのですから。

プロ野球選手になりそこね、所属していた実業団チームも解散が決まって行き場所を失ったスラッガー。酷使されて身体も心もボロボロになり、二度と投げられなくなってしまった元プロ野球選手のピッチャー。大学野球で挫折して故郷に戻って教師兼指導者の道に進む前に、もう一度実力を試そうとするキャッチャー。弱小チームの主将となって、父親業との両立に悩む大ベテラン選手。こんな寄せ集めメンバーが、マレーシアで野球を教えていた監督のもとで、チームとして再出発。

職場との両立に悩む選手や、選手を受け入れた地元会社の問題という、新鮮な視点もありましたが、なんか「どこかで聞いたことのある話」のようです。これなら「なでしこリーグ」の「湯郷ベル物語」のほうが、実話である分、ずっとおもしろそう。

唯一、この著者らしさを感じたのは、チームマネージャーの安東心花のエピソードでしょうか。地方展開するスーパーの採用に引っかかって、冴えない店舗に勤務している女性が、業務命令で野球チームのマネージャーに任命。やる気もノウハウもない彼女の変貌ぶりは、楽しかったですね。彼女の一人称小説でもよかったかもしれません。

2015/1