りぼんの読書ノート

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バンクーバー朝日(テッド・Y・フルモト)

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バンクーバーで白人による排日暴動が起きたのは、1908年のこと。その直後に誕生した日系人野球チーム「バンクーバー朝日」が、白人チーム中心のリーグ戦に参戦して、ついには優勝を果たすまでの物語。

過酷な労働と貧困の中にあり、苛烈な人種差別に苦しんでいた日系移民にとって唯一、白人と同じ土俵で対等に競うことができたものが、野球だったとのこと。しかし、選手を集めるのにも苦労したチームが、どのようにして実力をつけていったのでしょう。

その答えは「スモール・ベースボール」でした。日本がWBCで連覇したことで知られるようになった言葉ですが、100年前のカナダで既に実践されていたのですね。ホームランを狙って大振りを繰り返す白人チームに対して、小柄だが機敏な日系人選手たちは、バントや俊足やサインプレーを多用して立ち向かったのです。そしてついに、日系人のみならず、白人たちからも賞賛を得るようになるのですが・・。

太平洋戦争の勃発とともに、日系人は収容所に入れられてしまい、「朝日軍」は消滅してしまいます。後に公式謝罪を受けて名誉回復され、「朝日軍」はカナダ野球界の殿堂入りを果たすのですが、この事実が日本で大きく報道されることはありませんでした。

初期の「朝日軍」のエースであった、テディー・フルモトの子息である著者が、自費出版によって本書を著した背景には、そんな事情があったようです。最近、人気俳優陣によって映画化されました。著者の想いは報われましたね。

2016/3