りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2014/2 クコツキイの症例(リュドミラ・ウリツカヤ)

100年前の『青鞜』発刊と、50年前のパンナムによる日系二世スチュワーデス採用の間には、太平洋戦争という大きな断絶が横たわっていますし、そもそも別の国の出来事なのですが、それでも女性の社会進出の歩みが加速していることは感じられます。

1位にあげたウリツカヤさんは、おそらくロシアでもっとも著名な女性作家でしょうが、モスクワ大学で遺伝学を専攻したという異例の経歴を持っている方です。

1.クコツキイの症例(リュドミラ・ウリツカヤ)
患部を「透視」できるという能力を持つ産婦人科医パーヴェルが、スターリン時代のソ連で違法とされていた堕胎の合法化を訴えたとき、妻エレーナは夫を拒否し始め、家族の崩壊が始まりました。「雪解け」という時代の変換期を背景にして、社会と人間、生と死、宗教と科学という大きなテーマなに取り組む本書は、「現代のトルストイ作品」のようです。

2.パン・アメリカン航空と日系二世スチュワーデス(クリスティン.R.ヤノ)
戦後すぐに世界一周路線を開業した唯一の航空会社は、1955年という早い時期に最初の非白人スチュワーデスとして日系二世を採用し始めました。コスモポリタニズムと文化的多様性を象徴し、控えめで尽くすタイプの女性として日系二世を選んだパンナムに対して、応募した女性たちはドライでした。「世界を見てまわれるじゃない!」。グローバライゼイションの先駆けでもあり、ひとつの「戦後史」としても貴重な作品です。

3.『青鞜』の冒険(森まゆみ)
平塚らいてうの「元始、女性は太陽であった」という創刊の辞や、与謝野晶子が送った「山の動く日来る」という詩によって、「新しい女たち」というコンセプトを打ち出した雑誌の実態に、20年以上も地域雑誌編集に携わった経験のある著者が迫ります。編集後記から読み取れる高揚感も、営業活動や地道な作業をないがしろにした反省も含めて、『青鞜』は「先駆者」だったのですね。


2014/2/28