りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

日曜日のピッチ(ジム・ホワイト)

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「父と子のフットボール物語」との副題がついた本書は、イギリスでスポーツライターといて活躍している著者が、地域の少年サッカーチームの監督としての活動を描いたノンフィクション的な作品です。

息子が参加しているサッカー・クラブに顔を出していただけの主人公(たぶん著者)が、クラブの責任者に一杯食わされてチームの監督にさせられてしまいます。古今東西の名監督の言葉を引用してモチベーションをあげようとしたり、聞き及んだ練習方法を試してみても、うまくいかずに空回りするばかり。相手は14歳の少年なのですから。

それより問題なのは親たちの存在。自分の子どもが交替させられたりすると文句をつけてくるだけならまだしも、チーム編成とか試合の戦術とか練習方法とか、ありとあらゆることに口を出してくる。さすがにサッカーの母国です。誰もが「代表監督という副業を持っている」と言われる国です。さらに、素人コーチたちの間にも対立があるというのですから監督は大変ですね。全員がボランティアだというのに。

少年スポーツの目的は勝つことだけではないけれど、勝負を度外視できるものではありません。主人公(たぶん著者)が最後まで悩み続けるのが両者のバランスであり、つい下手な子を無視したり、つい試合でのミスに怒鳴ったりしてしまって反省するんですね。でも昨今の日本で問題になっている体罰の存在を考えると、反省するだけ立派です。勝負至上主義の指導者がいかに多いことか。

それでも子どもたちは、サッカーを楽しんで成長していくんですね。もちろん監督を勤めた主人公(たぶん著者)も。だから、チームが奇跡的にAリーグ残留を決めたあとで、自分の息子から「全部楽しかった」と言われて、親として、少年スポーツの指導者として素直に嬉しく思えるのです。もちろん、安堵感も癒され感も混じってはいるのでしょうが。

2013/12