りぼんの読書ノート

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小説フランス革命4 議会の迷走(佐藤賢一)

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巨星堕つ。革命前の三部会時代からずっと革命と議会を牽引してきたミラボーの病が篤くなり、ついに最期を迎えてしまいます。国民からの人気も高く、巧みな議会戦術を駆使し、立憲君主制を唱えて王室を擁護して議会を牽制してきたミラボーの死によって、革命はどこに向かうことになるのでしょう。

聖職者の任命権はフランス国家に帰属するという「聖職者民事基本法」を成立させたミラボーでしたが、病が篤くなっていく中で影響力にも陰りが見えてきます。聖職者議員との間を仲介させたタレイランの傲慢さなどもあり、議会と聖職者は分裂。フランス国内での信仰を二分する「シスマ」状態に陥ってしまう。この問題は後に「ヴァンデ蜂起」に繋がっていくのですから、シリアスです。

ミラボーは、理想主義が革命を硬直化させていくことを見越していたかのようです。未だ権力からは程遠い所にいるロベスピエールには、「もっと自分の欲を持ちたまえ。さもないと独裁者になるぞ」と忠告するのですが・・。

アッシニア紙幣の暴落、国境地帯に配備された民兵の不服従、王室亡命権の問題・・。どの問題をとってみても、革命の理想を声高に論じるだけでは解決していきません。ただひとり現実的な問題解決能力を有していたミラボーの死は、王室を不安に陥れ、2ヵ月後の「ルイ16世一家亡命未遂事件」を引き起こすのですが、これは次巻で語られるはず。

「くすぶり弁護士」からパレ・ロワイヤルの英雄となったカミーユ・デムーランは、ついに恋人リュシルの両親の説得に成功し、ロベスピエールらの祝福のもとで結婚にこぎつけることができました。これは明るい話題ですけど、後の彼らの運命を知る者としては手放しでは喜べません。

2009/11