りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

無銭優雅(山田詠美)

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大人になり損ねた40代の男と女が繰り広げる、真剣な恋愛ドラマ。でも決して、渡部淳一ばりの中年ドロドロ恋愛ではありません。あれは逆に、マジメに子供時代をしてこなかった、訳知り顔の大人がエアポケットに落ちるようなもの・・だと思う。(読む気しません)

2人の恋愛は、「大人の恋」には程遠い子供っぽいドラマなのです。お互いに相手を「ふらふらした存在」と思って敷石に相合傘を書き、お互いに今まで誰からも貰えなかったご褒美を相手にあげて喜び、お互いにちっぽけなことを成しえて鼻高々になる嬉しさを感じる。好きな四文字熟語として「天衣無縫、質実剛健、呵呵大笑、一蓮托生、目元千両、口元万両・・」と続けたあとで、でも一番は「斉藤慈雨!」。

それは主人公の女性の名前です。壷井栄の小説に出てくる、清らかな心の少女と同じ名前。でもその少女は、戦後のぎゅうぎゅう詰めの電車の中で、乗客に押しつぶされて死んでしまうのですが・・。

もちろん2人とも、子供っぽいだけの存在ではありません。好きな相手に対して、子供っぽく振舞えることが嬉しいんですね。ところどころに挿まれている「愛の名作」と言われる小説からの断片的な引用は、2人の心象風景なのでしょうか。

「ヴェロニカ・ペルシカ」という、可憐な薄青の花を咲かせる草花。気取った名前なら許せないけど、「おおいぬのふぐり」だから、笑ってしまう。気取らない2人の子供っぽい真剣さも、そんな感じなのでしょう。でも読んでいて違和感あったのですが、レビューを書き始めてみてその正体がわかりました。この登場人物のキャラが私の好みとは全然違うので、魅力を感じなかったようなのです(笑)。

2007/4