りぼんの読書ノート

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宗教が往く(松尾スズキ)

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演劇界の鬼才による初の長編小説は、醜悪さの中に純愛を潜ませた作品でした。主人公は、生まれつき頭が異常に大きなフクスケという人物。地方の名家に生まれながら、下女によって弄ばれたあげくに妊娠させてしまい、15歳にして上京。やがて没落した生家には頼りようもなく、外国人娼婦たちとともに10年間暮らし、エボラを彷彿とさせる伝染病の世界的な蔓延に関わりを持ち、衰退する世界の中で下北沢の狂犬女ミツコとともに「劇団大人サイズ」を立ち上げるに至ります。 

 

そこに集まったのは、自称宗教家に、変態デブに、マッドサイエンティストに、死体愛好家に、フクスケと下女の双子の子供と名乗るセックスマニアの少年少女など。なぜかテレビ局ディレクターからウケたせいで宗教をテーマにした番組を持つに至るのですが・・。 

 

そんな中でミツコとの純愛に目覚めたフクスケでしたが、綺麗には終わってくれません。少女姿のまま数十年を生きる元子役女優と2つめの純愛に落ちてしまい、混乱の中で物語はカタストロフィへと向かって行きます。そして行き場を失ったフクスケの純愛は、著者の現実世界の恋愛と結びついていくのです。過剰ともいえる伏線どころか、小説の三人称問題について語った過剰な前説まで拾ってしまう律儀さには感心。ちょっとついていけない描写も多かったのですけれど。 

 

2019/11