りぼんの読書ノート

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洪水の年(マーガレット・アトウッド)

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カナダ文学界の巨匠による世界終末譚「マッドアダムの物語3作」の第2作です。第1作の『オリクスとクレイク 』以来8年もたって、出版社を変えて、ようやく翻訳書が出版されました。

 

本書の主人公は、行き過ぎた人工世界に異議を唱えるエコロジカル宗教団体「神の庭師たち」で暮らす孤独な女性トビーと、宗教指導者マッドアダムを父親に持つ少女レン。トビーは粗暴な男から救出されて居場所を見つけ出し、レンは両親の不和と出生の疑惑にとまどっています。「神の庭師たち」が予言していた「水なし洪水」が、マッドサイエンティストのクレイクによって実現することなど、知る由もない2人でしたが、狂った世界が終末に向かっている予感は共有しています。

 

物語の現在地点は、「洪水の年」となった教団歴25年。誰もいなくなった「神の庭師たち」の施設で独りサバイバル生活をしているトビーと、高級風俗クラブの隔離室に入っていたため難を逃れたもののそこに閉じ込められてしまったレンが、洪水に至る過去を回想しながら、ついに再会を果たします。数少ない人類の生き残りとも合流し、2人は人造人間「クレイカー」が共同生活を営む農場に行き着くのですが・・。

 

巨匠による終末小説が、英雄が活躍する舞台として未来のディストピアを描くSF映画と一線を画しているのは、登場人物が普通の人々にすぎない点ですね。世界はどのようにして滅びへの道を歩むのか、どうすればそれを阻止できるのかを考えさせられてしまいます。第3巻の『MaddAddam』も早く読みたいのですが、きっとなかなか出ないだろうなぁ。

 

2019/7