りぼんの読書ノート

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水底の女(レイモンド・チャンドラー)

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村上春樹さんの新訳による「フィリップ・マーロウ」作品の7作目。これで全長編が翻訳されたことになります。

 

男と駆け落ちしたらしい奔放な妻の安否を確認して欲しいという、香水会社の経営者からの依頼を受けたマーロウ。妻の足取りを追って、人里離れた湖にたどり着いたマーロウは、そこで湖の管理人の妻の死体を発見。2人の女性は同じ男性と関わっていたようなのですが、2つの事件に関係があるのでしょうか。

 

村上さんが後書きで触れているように、本書はチャンドラーの不調期に書かれた作品とのことで、あまり出来は良くないようです。もとは2つの異なる小説を合わせて1つの作品にしたために矛盾が目につくとか、「入れ替わりトリック」だけで全編を持たせようとしかているとかの批評もありますが、シリーズ随一の悪女と対決するマーロウの魅力は健在です。

 

本書はまた「強くなければ生きていけない。優しくなければ生きる資格がない」との言葉で有名なのですが、これはかなりの意訳であるとのこと。村上さんがどう翻訳したのかも楽しみでしたが、人口に膾炙した意訳のほうが強烈ですね。文脈における位置づけとは別にして、この言葉はハードボイルドの本質を見事に衝いていたと思うのです。

 

2019/7