りぼんの読書ノート

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トランクの中に行った双子(ショーニン・マグワイア)

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ウサギ穴に落ちたり、衣装ダンスの奥に潜り込んだり、竜巻にさらわれたりして、異世界での冒険を体験して戻ってきた子供たちの誰もが、現実世界に適応できるわけではありません。異世界に戻ることを希求し続けながら年を経てしまった老女エリノアが経営する学園は、そのような子供たちに救いの手を差し伸べる場所なのです。

 

シリーズ第1弾の『不思議の国の少女たち』は、死者の殿堂から戻ったナンシーが入学した学園で連続殺人事件が起こり、妖精国でゴブリン女王だったケイド、骸骨の恋人と引き離されたクリストファー、ヴァンパイアの国でマッドサイエンティストの弟子だったジャックを含めた4人が、犯人捜しをする物語でした。シリーズ第2弾の本書は少々時間を遡って、前巻でも活躍したジャックと双子の妹のジルが、ヴァンパイアに支配された世界で過ごした日々の物語です。

 

完璧主義の両親に育てられた双子の姉妹の本名はジャクリーンとジリアン。姉のジャクリーンは母親から理想の娘像を押し付けられ、妹のジリアンは父親が望んで得られなかった息子の身代わりとされて育ちます。そんな役割に反発しながらも従うしかなかった2人は、12歳の時に、祖母が置き忘れたトランクの中から不思議な階段が下に伸びているのを見つけるのでした。

 

異世界に落ちた2人は、そこで望んでいた自分になるのです。「りこうなほう」だったジリアンは異世界を支配するヴァンパイアの美しい養女となる道を、「かわいいほう」だったジャクリーンは反抗者のマッドサイエンティストの弟子となる道を選ぶのですが、そこは決して理想郷ではなかったのです。やがて2人の存在が、村人たちの間に軋轢を引き起こしていくのですが・・。

 

本書を読むと、異世界に強く戻りたがっていたのがジルのほうだということが、よくわかりますね。彼女は決してそこから追放されてしまったのですから。もちろんジルの巻き添えになって運命を共にせざるをえなかったジャックも、いずれ帰還する約束を交わしていたのですが・・。この話が第1巻に続いていったのですね。

 

2021/1