りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2009/6 天涯の船(玉岡かおる)

今月のキーワードは「ユーモア」でしょうか。荒唐無稽な計画をコミカルに語りながらも深みを感じさせる『イエメンで鮭釣りを』も、大真面目な登場人物の振る舞いがどことなく滑稽な『最終目的地』も、いい作品でした。『イエメンで鮭釣りを』は今年から刊行がはじまった「白水社Exlibris」の第2弾。第1弾が『ジーザス・サン』ですから、今後も良質の翻訳書を期待できそうです。

「篤姫」を思わせるドラマチックな展開の『天涯の船』は、好みの作品でございます。^^
Exlibrisホームページ

1.天涯の船(玉岡かおる)
明治中期。旧姫路藩家老の姫君の身代わりとして米国へ留学した下働きの少女が、オーストリア貴族の血を引く青年に求婚され、やはり留学中に知り合った日本の青年実業家に心惹かれながらも、欧州へと嫁いでいく。そして時代は戦争へ・・。「クーデンホーフ・ミツコ」と「松方幸次郎」をモデルにした純愛ドラマですが、もちろん2人の関係はフィクションです。好みでございました。^^

2.イエメンで鮭釣りを(ポール・トーディ)
北洋を回遊する鮭を、砂漠の国イエメンに放流する? イエメン人の富豪が企画した前代未聞の無謀なプロジェクトに、首相官邸が関心を持ってしまったために、研究一筋の真面目なフレッドは振り回されていきます。奇跡は起こるのか。計画はどこに行き着くのか。ユーモアたっぷりの語り口ですが、信仰と人間関係がもたらす心のあり方についての深い洞察すら感じられます。

3.最終目的地(ピーター・キャメロン)
ナチスの迫害を逃れてウルグアイに移り住んだ作家の遺族たちは、虚構にも思える「作家の思い出」によって結び付けられていたのですが、作家の「公認の伝記」を著したいというアメリカの大学生の登場が、彼らの間の平衡を崩してしまいます。登場人物たちは、いったいどんな「目的地」へと向かうことになるのでしょう?



2009/7/1記