りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

本のなかで恋をして(パオラ・カルヴェッティ)

イメージ 1

ミラノに住む50歳のバツイチ女性・エンマは、叔母から相続した文房具店を「夢うつつ」と命名し、恋愛小説だけを扱う書店に変貌させます。友人たちは彼女の経営力を心配したけれど、やはり書店の魅力はセンスです。だんだん書店も軌道に乗って来ました。

そんな中、仕入れた古本のシールで見つけたのは、高校時代の恋人フェデリーコの名前と連絡先。おそるおそる再会した2人に、恋心が復活。しかし彼は、建築家としてニューヨークのプロジェクトに参加する妻子ある身。再び離れ離れになった2人は、古風にも文通を始めます。

まずはお互いの手紙がいいですね。相手への思いを抑制しながら、自分の仕事に触れ、相手の関心を思いやる文章が素晴らしいのです。エンマは書店で開催するイベントへの思いに乗せてフェデリーコへの感情を綴り、フェデリーコはモルガン図書館を改築する仕事にエンマへの思いを馳せていきます。やがて秘めた思いを抑えきれなくなった時に、フェデリーコの妻アンナが急死。互いに自責の念を感じて、2人の関係は途絶えてしまうのですが・・。

直前に読んだ蔵書まるごと消失事件と同様、本の名前がたくさん登場します。シェークスピア、オースティン、ブロンテ姉妹、トルストイスタンダールらの巨匠たちから、クンデラ、マキューアン、カニンガムらの現代作家、さらにはイタリア名作映画の原作まで登場する多様さには、「小説とはマリッジ・プロットのこと」とすら思わされそうなほど。

ニューヨークのモルガン・ライブラリーは実在するんですね。銀行家のJ.P.モルガンが膨大な図書コレクションのために作った図書館で、『グーテンベルク聖書』や、画家の素描、音楽家の楽譜、著名人の手紙や原稿などが収蔵されているとのこと。イタリアの建築家によって改築され2006年に再オープンしたという事実は、本書の通り。訪れてみたい場所です。

2013/7