りぼんの読書ノート

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蔵書まるごと消失事件(イアン・サンソム)

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本と図書館を愛するダメ青年のイスラエル。憧れの図書館司書の職を得て、ロンドンからはるばるアイルランドの片田舎タムドラムへとやってきたのですが、なんと図書館は閉鎖。代わりに提供されたのはポンコツのマイクロバスを使う移動図書館の仕事だったのですが、1万5千冊あるという蔵書は残らず消えていました。

地元の人たちからは胡散臭く思われ、土地の言葉もわからない。マイクロバスの運転をするための地図もない。容疑者なんて想像もつかない中で、上司のリンダからは責任だけは押し付けられる。ロンドンに帰ってしまいたくても所持金はなく、恋人に電話しても冷たい反応。ヘタレキャラのイスラエルは、こんな状況の中で何ができるのでしょうか。

司書を首になった前任者ノーマンを怪しいと思ったり、図書館を廃止しようと企む町の陰謀説を唱えたり、悪徳古物商のバリモアを疑ったりするのですが、彼の推理は全部見当外れ。

事件の真相に至る鍵は、本を愛して移動図書館の開始を待ち望んでいる人たちが、どこにでもいるということ。ぶっきらぼうな運転手のテッドも、下宿先の娘ジョージーナも、彼女の叔母で喫茶店を営むゼルダも、風変わりな黒人牧師のイングランドも、イスラエルの人物とやる気を評価し始めます。登場人物たちが何かにつけて本について言及する本書は、読書好きには楽しいミステリですね。

2013/7