りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

わたしが降らせた雪(グレース・マクリーン)

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内面の奥深くへと向かった、少女のイニシエーションの物語です。小さな町で信仰に篤い布教者の父とふたり暮らしのジュディスの悩みは、学校でいじめられるていること。彼女の心のよりどころは、自分の部屋に作った模型の世界「最も美しい土地」でした。

ある日ジュディスが「最も美しい土地」に雪を降らせると、翌朝の町は一面の銀世界。これは神が起こした奇跡なのでしょうか。「神の声」が聞こえるようになったジュディスがいじめっ子に怒りを感じると、いじめに厳しい先生が現れて、いじめっ子を罰してくれました。これもまた彼女の力なのでしょうか。

「奇跡」は起こりました。しかし「奇跡」は代償を伴います。事態は過激化していき、現実と幻想が交じり合う中で、ジュディスは逆に追い詰められていくのです。揺らぐ父の信仰、母の死の真相、いじめっ子の交通事故、悪魔の囁きのように聞こえ出す「神の声」・・。そしてついに「神の声」はハルマゲドンの到来を告げはじめます。繊細で多感な少女の苦しみに出口はあるのでしょうか。。

最後に少女を救うことになるのは、神を信じる気持ちではなく、人を思う気持ちだったようです。もちろん本書は反宗教的な作品ではありませんが、信仰を逃避の手段にしたり、神を試すようなことは赦されないということなのでしょう。わずか10歳で、自分にできることや為すべきことというテーマに向き合うことになる少女の姿は痛々しいのですが・・。

2013/7