イタリア半島の最南端に位置するカラブリア州の小村ロッカルバ。ティレニア海とイオニア海という「ふたつの海」を見下ろす小高い丘に建っていた「いちじくの館」。1835年にフランスの文豪デュマも泊まったという宿は、既に焼け落ちて荒れ果てていました。しかしデュマが宿に忘れて行った手記は、子孫に受け継がれていたのです。
数世代の後、「いちじくの館」の再建を生涯の目標と定めたジョルジュ・ベッルーシは、夢の実現に向けて動き出した矢先に、土地の犯罪組織から嫌がらせを受けたあげく、警察に逮捕されてしまいます。実は彼は怒りのあまり組織員を手にかけてしまったのです。
本書の語り手は、ジョルジュの孫のフロリアン。一家は父の出身地ハンブルクに移住しており、彼にとって、祖父ジョルジュの記憶はおぼろげなものでしかありません。しかし祖父が出所した日に、母とともにカラブリアへと向かったフロリアンは、「いちじくの館」の再建という祖父の夢を引き継ぐことを約束させられてしまいます。
物語は、複数の時空を行き来しながら進んでいきます。ひとつは現在のフロリアンと、老いた祖父ジョルジュの交流の物語。もうひとつはフロリアンに対して、祖母パトリツィアが、母ロザンナが、ジョルジュの親友でもうひとりの祖父のハンス・ホイマンが語る、過去のジョルジュの物語。さらにその背景には、19世紀の物語もあるのです。
キーワードは「旅」ですね。青年時代のジョルジュが、娘時代の祖母パトリツィアのもとへと向かう旅。ジョルジュはその途中でハンスと出会ったのでした。娘時代の母ロザンナがハンブルクにハンスを訪ねて行き、ハンスの息子クラウスと出会う旅話。3つめは、高校を卒業したフロリアンがカラブリアへと向かう旅。
そして4つめの旅は・・。
そして4つめの旅は・・。
2017/8