りぼんの読書ノート

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皇后ジョゼフィーヌの恋(藤本ひとみ)

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文庫化に際して改題されましたが、原題の『皇后ジョゼフィーヌのおいしい人生』のほうがいいですね。本書は、踏まれても倒れても、女であることを武器としながらステップアップを目指し、最後までハッピーでいられた女性の物語なのです。

その女性は、ナポレオンの皇后ジョゼフィーヌカリブ海に浮かぶフランス領マルティニーク島の貧乏貴族の娘として生まれ、贅沢な暮らしに憧れて妹に来た縁談を奪い取って、パリのボアルネ子爵と結婚。2子を得ますが、宮廷でサロンを開いて欲しいとの夫のリクエストに応えられるほどの才能はなく、革命後に離婚。

しかし元夫がフランス革命政府の議員となり、革命の大立者となったバラスやタリアンらと知り合ったことから、彼女の運命は開けていきます。元夫はギロチンにかけられ、ジョゼフィーヌも投獄されますが、バラスらが起こした反ロベスピエール・クーデタで釈放。一時はバラスの愛人となり、本書では反ロベスピエール勢力の仲介すら行っていたとされますが、そのあたりはどうなのでしょう。

そしてバラスが引き立てた軍人ナポレオンから求婚され、結婚するのですが、彼女は完全に悪妻ですね。戦地への同行を拒み、パリで贅沢な生活を送りながら愛人と浮気を繰り返すのです。ついには離婚の危機に陥るのですが、かろうじて踏みとどまれました。このころからジェゼフィーヌもナポレオンを真摯に愛するようになっていくのですが、皮肉なことに、オーストリア皇女マリア・ルイーザとの政略結婚によって離婚されてしまいます。

でも彼女は「おいしい人生」を歩んだと言えるでしょう。ナポレオンとは生涯よい友情を育み、息子も娘も義父の引き立てあってとはいえ幸福な人生を歩み、何より皇后の称号とマルメゾン城と巨額の年金を受け取り続けたのですから。彼女の最後の言葉は「ボナパルト」であり、ナポレオンの最後の言葉も「ジョゼフィーヌ」だったそうです。こういう本を読むと、女性の幸福とは何なのか、考えさせられてしまいます。

2017/8