りぼんの読書ノート

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神さまたちの遊ぶ庭(宮下奈都)

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福井に在住している著者が、北海道は大雪山国立公園内の小さな集落「トムラウシ」で1年間暮らした物語。発端は「自然に根差した暮らしがしたい」という夫の提案。小中学校には山村留学という制度があるものの、ここには高校がないので、長男が中3のときの1年間がラストチャンスだったのですね。

最寄りのスーパーまで37キロ。TSUTAYAまで60キロ。テレビ難視聴地域であり、携帯も繋がりにくい豪雪地帯。僻地5級指定の学校の生徒は小中学生合わせて15名。しかしここは、「カムイミンタラ(アイヌ語で神々の遊ぶ庭)」と呼ばれるほどの、素晴らしい景観の地だったのです。

そして、元気な先生たち、オープンな隣人たち、純朴な子供たちとともに過ごした「毎日が冒険」のような1年間は、家族にとってかけがえのないものになったようです。とりわけ子供たちにとっては、何事にも本気になる大人たちとの触れ合いが貴重だった模様。常に本気を求められる厳しい自然環境と、日常的に触れ合う機会の多い小さなコミュニティのなせる業ですね。

子供たちのナチュラル・ボケにつっこむ著者にとっても、楽しい1年間だったようです。ちょっと気になるのは、言い出しっぺの父親の影が、だんだん薄くなっていった気がしたことでしょうか。まあ、エッセイのネタになることが少なかっただけかもしれませんが。

2016/2