りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015/3 古事記 日本文学全集1(池澤夏樹編)

池澤夏樹さんの翻訳による『古事記』を読みました。まともに読んだのは初めてでしたが、冒頭からヤマトタケルまでの物語は結構覚えていました。それ以降は断片的です。「神話教育」に関わる問題があることは理解しているつもりですが、「怪しい日本神話」を排除するためにも、やはり正典をきちんと教えておくべきと思います。読み物としての面白さだって、ギリシャ神話や旧約聖書に負けていないと思いますし。

1.古事記 日本文学全集1(池澤夏樹編)
池澤夏樹さんの個人編集による「日本文学全集」の第1巻は、ご自身の翻訳による『古事記』でした。「もとの混乱した感じをどこまで残すか、その上でどうやって読みやすい今の日本語に移すか、翻訳は楽しい苦労だった」と語っていますが、その試みは成功したのでしょう。楽しく読めましたので。古事記に登場する神々、神社、地名、氏名の由来などが現代まで伝えられているのですね。日本の歴史の継続性に、あらためて感心した次第です。

2.凍(沢木耕太郎)
著者のことは、『深夜特急』の著者としてしか認識していなかったのですが、ノンフィクション・ライターの優れた書き手でもあったことを本書によって知りました。ともにアルペン・スタイルのクライマーである山野井泰史と妙子夫妻を主人公とした山岳ノンフィクションは、文体も内容も主人公も、新田次郎氏の『孤高の人』を思わせるストイックな作品です。

3.道を視る少年(オースン・スコット・カード)
エンダー・シリーズ』の著者による新シリーズです。父親を失った少年が持つ「人や動物の移動軌跡が見える能力」とは何なのか。19に分割された世界と、11千年前から遡って時を刻んでいる暦にはどんな意味があるのか。そもそも父親とは何者だったのか。ファンタジー的な要素を多く感じますが、物語の背景にはSF的設定がありました。次巻も楽しみです。



2015/3/30