りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2017/2 プラネットアース(アラステア・フォザギル)

巨匠の遺作か、人気作家の新シリーズか、新鋭作家の直木賞候補作か悩みましたが、10年前に出版された写真集を1位に選ぶことにしました。この作品で突きつけられた課題は、今でも色褪せていないどころか、いっそう先鋭化しているのです。大きくて重くて高い本ですが、それだけの価値はあると思います。
1.プラネットアース(アラステア・フォザギル)
2006年にNHKスペシャル枠で11週に渡って放映された、自然ドキュメンタリーシリーズを概括した愛蔵版です。地球上の各地での地形形成と気象影響を説明したうえで、そこに生きる動植物の課題を明確にしていく構成は、体系的です。そして懸命に生きる動植物の生態は感動的なのです。新シリーズの放送開始を機会に手に取ってみましたが、今でも色褪せてはいません。

2.ヌメロ・ゼロ(ウンベルト・エーコ)
2016年2月に84歳で亡くなられた著者の7作目にして最後の小説は、前作と同様に情報操作をテーマとするものでした。「握りつぶされた真実の告発」を標榜する新聞の目的は、強請りや利益供与でしかなかったのですが、思わぬ事件に発展してしまいます。「記憶こそ私たちの魂」と述べる著者の期待に応えるには、とてつもない意志力と解析力が求められそうですが・・。

3.書楼弔堂 破曉(京極夏彦)
明治20年代半ば、「探書」に訪れる者に「一冊の本」を勧める不思議な書楼「弔堂」の物語。書楼の主人は、本とは読者を得て再生の時を待っている「移ろい行く過去を封じ込めた墓」だというのです。その本は実在の人物に人生の転機を与えることになるのですが、史実とフィクションが交差する瞬間がいいですね。シリーズ化予定とのことですので、期待しています。



2017/2/27