りぼんの読書ノート

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ロケットガール4 魔法使いとランデヴー(野尻抱介)

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このシリーズのクライマックスは、やはり第3巻私と月につきあっての月面着陸ミッションの再開でした。短編3作と中篇1作からなる本書は「おまけ」のようなもの。それでもハードSF作家の野尻さんは、コミカルな展開の中にもさまざまな主張を織り込んでくれています。

「ムーンフェイスをぶっとばせ」 ロケットガールズが滞在中の国際宇宙ステーションを訪問した人気アイドルのミムタクは、生中継を前にして「まん丸顔」になってしまいます。無重力状態で頭部に鬱血するムーンフェイス状態は、数日あれば元に戻るのですが、アイドルですからね。船外でロープにくくりつけられ、振り回されるという擬似遠心力は問題を解決してくれるのでしょうか。

「クリスマス・ミッション」 カプセル式宇宙機の地上着陸実験は名目。実はサンタ姿のロケットガールズが孤児院を慰問する物語でした。

「対決!聖戦士VS女子高生」 国際宇宙ステーションにテロリストが来襲!でもロケットガールズの敵ではありませんね。隠れたテーマは「国際宇宙ステーションの自活」だそうです。科学実験よりも宇宙機の発着、組み立て・整備に使うべきというのが、著者の主張です。

「魔法使いとランデヴー」 小惑星探査機「はちどり」が、トラブルのため地球に帰還できなくなってしまいます。救出を打診されたゆかりは、あまりにも危険な任務を拒否しようとするのですが、不思議な予言を聞いたマツリは積極的。レミソ島の恋人が「はちどり」に乗っている小惑星「マトガワ」の破片なんだそうです。2人は「はちどり」に乗って極超音速でウインドサーフィーンを行い、熱防御なしの大気圏突入をはかるのですが・・。

大気が希薄なうちに大きな揚力体を展開し、滑空しつつブレーキをかければ、熱防御なしで宇宙機を帰還させられるそうです。実際に作ろうとすると揚力体が大きく重くなりすぎて、打ち上げコストに見合わないそうですが、本書では科学主任・三原素子の開発した超軽量の新素材で可能にしているとのこと。しかし、このアクションはさすがに危険すぎるでしょう。

2014/8