りぼんの読書ノート

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ロケットガール2 天使は結果オーライ(野尻抱介)

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日本の独立行政法人であるSSA(ソロモン宇宙協会)のパイロットの条件は、体重が40kg以下であること。それ以上重いと有人ロケット打ち上げに支障が出てしまうのです。偶然から誕生した女子高生宇宙飛行士の森田ゆかりと同年の異母妹マツリに、新しい仲間が加わりました。

大気圏再突入時のトラブルで母校の池に不時着したゆかりとマツリの前に現れて、故障した実験装置に応急処置を施してみせたのが、ほっそりとした秀才少女の三浦茜。ミッションスペシャリストの素質を見込まれたものの、彼女の欠点は体力面。とりわけ4Gで必ず気絶してしまう耐G能力の低さは致命的なのですが、茜の能力を惜しんだスタッフたちは「最後のテスト」を行います。

折りしも、NASAが軌道上のスペースシャトルから打ち出そうとしていた冥王星無人探査機オルフェウスでトラブル発生。「軽さと機敏さ」を武器にするSSAはオルフェウス救出に名乗りを上げて実現した、茜の初飛行は、とんでもないことになっていくのでした・・。

本書で著者が描きたかったのはおそらく次の2点でしょう。ひとつは数10年単位で準備されるビッグ・プロジェクトの灯火を消してはいけないということ。もうひとつはアポロやスペースシャトルに代表される重厚長大な技術には先がないこと。やはりSSAの「カプセル型宇宙船、ハイブリッドエンジン、スキンタイト宇宙服」の「軽さと機敏さ」が優位なのです。実現できればですが・・。

20年越しでオルフェウスを準備してきたNASAの研究者やパイロットたちの熱意に打たれたゆかりと茜が、危険な任務への挑戦を決意するところが、ストーリー的なクライマックス。アクション的なクライマックスは、軌道上のシャトルからの加速発進による前代未聞の高度への有人飛行、楕円軌道上でのワンチャンスのドッキング、さらには大気圏再突入時の温度上昇回避のためのドルフィン運動など、枚挙に暇がありません。もちろん、ゆかりと茜が天球を覆う巨大な地球を振り返る場面も。

2014/8