りぼんの読書ノート

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ロケットガール3 私と月につきあって(野尻抱介)

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このシリーズは、現実世界における宇宙探索・開発プロジェクトの再開を求めて、アポロ計画以来30年も途絶えている月面着陸ミッションの現代的バージョンを描くことが目的だったようです。1巻と2巻は、本書に至る準備段階のようにすら思えます。

日本の独立行政法人であるSSA(ソロモン宇宙協会)のロケットガールズの成功に刺激を受けたフランスは、一気に5人の女性パイロットを揃えてアポロ以来の月面着陸ミッションを計画。そのサポート任務に就いた、ゆかり、マツリ、茜の3人は南米ギアナの宇宙センターへと向かったものの、フランス隊の冷徹なリーダーであるソランジェと衝突してしまいます。そもそも月へ向かうのはフランス隊だけなのですが、資金を出すというのは、そういうことなのです。

ところが、身持ちの軽いフランス娘の妊娠や、地球周回軌道上のトラブルによるメンバーの怪我などもあって、SSAのロケットガールズの月への出動が決定。月面着陸チームは、消去法によって相性の悪いゆかりとソランジェに決定。月面に大量の氷を発見した2人ですが、月面着陸機が壊れてしまい、絶体絶命のピンチに陥ってしまいます。迫り来る死を覚悟した2人ですが、サポート・チームはあきらめません。冷静な茜のアイデアと計算、さらにマツリの思い切った船外活動による、月面脱出作戦は成功するのでしょうか。

日本の少女のスキンタイト宇宙服姿や、フランス娘のジャンヌ・ダルクのようなライト・ハード宇宙服姿は、明らかに「萌え」を意識しているし、実際には許されないであろうリスキーなアクションを伴うストーリーですが、それでも本書は実現可能な宇宙旅行の姿を描くハードSFです。まだ実現していないガジェットも多いのですが、宇宙では「軽さと機敏さ」が必要という著者の主張は明確です。

2014/8