これはまた、なんという小説なのでしょう。
アポロの月面着陸に対抗するソ連は、月の裏側への着陸をめざすのですが、これがとんでもないローテクで、月に行っても帰ってはこれない特攻飛行。ロケットを切り離すたびに犠牲者を出し、月面探索機を漕ぐのは自転車のペダルなんです。しかも、よりおぞましい真実が・・。
著者は「本書はソヴィエトの宇宙開発についてではなく、ソヴィエト人の内面の宇宙をテーマにしたもの」と語っていますが、会話の中に登場するピンクフロイドの、本書では言及されない代表作が頭に浮かんできます。
そう「狂気」です。原題は「The Dark Side Of The Moon(月の裏側)」。そのアルバムのエンディングで「月のダーク・サイドなど本当はない。すべてが闇なのだから」と歌われているような悪夢的世界から、主人公の宇宙飛行士オモンは脱出できるのでしょうか・・。
2011/3