「日本を代表する作家23人の名文に導かれ京都を歩く」とのコンセプトで2008年に刊行されたシリーズですが、本書の第1巻「東山」が出ただけで中断してしまったようです。それぞれの寺院に対する複数の方々のさまざまな思いや感慨を読み比べるというのは面白いのですが、たとえば亀井勝一郎の『大和古寺風物誌』などと比較すると、やはりインパクトに欠けるのでしょうか。目次と印象に残った文章を紹介しておきましょう。
「清水寺」: 白州正子、杉本秀太郎、大庭みな子
「知恩院」: 川端康成、竹西寛子、保田輿重郎
「青蓮院」: 芥川龍之介、川端康成 梅原猛 青不動
「南禅寺」: 福永武彦、尾崎秀樹
「永観堂」: 瀬戸内寂聴、杉本秀太郎
「真如堂」: 杉本苑子、瀬戸内寂聴
「銀閣寺」: 吉井勇、中里恒子、水上勉
「妙法院」: 杉本秀太郎
「智積院」: 堂本印象、澤田ふじ子
「三十三間堂」: 竹山道雄、岡部伊都子
「泉涌寺」: 田辺聖子、永井路子、瀬戸内寂聴
「東福寺」: 大村しげ、堂本印象、秦恒平
「知恩院」: 川端康成、竹西寛子、保田輿重郎
「青蓮院」: 芥川龍之介、川端康成 梅原猛 青不動
「南禅寺」: 福永武彦、尾崎秀樹
「永観堂」: 瀬戸内寂聴、杉本秀太郎
「真如堂」: 杉本苑子、瀬戸内寂聴
「銀閣寺」: 吉井勇、中里恒子、水上勉
「妙法院」: 杉本秀太郎
「智積院」: 堂本印象、澤田ふじ子
「三十三間堂」: 竹山道雄、岡部伊都子
「泉涌寺」: 田辺聖子、永井路子、瀬戸内寂聴
「東福寺」: 大村しげ、堂本印象、秦恒平
◆ 桜の満開の時分、ここで月の出を見て、感動したことがあった。同じところから、同じ時刻に、月は出たけれども、二度とふたたびあの感動は味わえなかった。月も花も紅葉も、ある日のある瞬間、一生に一度しか見られないものかも知れない。(清水寺:白州正子)
◆ 人間、人生に無駄を知るようになるのは、たいてい晩年である。義政は、無駄のようにみえたその晩年に、心中の花を咲かせたひとりである。(銀閣寺:中里恒子)
◆ (うなずき如来が特に女性の煩悩救済を悲願とされた意味を聞いて)、玉藻の前と藤原詮子。このお寺にゆかりのある女人は、二人とも凄い人たちですね。(真如堂:杉本苑子)
同じ三十三間堂を見ても、異なる感想を抱く人たちがいるようです。
◆ 煽情的な宗教的な気持のあらわれたところは、ほかにはそうはあるまい。(三十三間堂:竹山道雄)
同じ三十三間堂を見ても、異なる感想を抱く人たちがいるようです。
◆ 煽情的な宗教的な気持のあらわれたところは、ほかにはそうはあるまい。(三十三間堂:竹山道雄)
また、長いので文章の引用はしませんが、当時三角関係になりかけていた与謝野鉄幹と、若き鳳晶子と山川登美子の3人が、鉄幹の公演旅行の帰りに永観堂の界隈をそぞろ歩きしたときの高揚感に触れた瀬戸内寂聴さんの文章が、印象に残りました。
2014/8