りぼんの読書ノート

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岳飛伝 5(北方謙三)

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南宋軍と金軍の全面対決は「岳飛vs兀朮」の直接対決の様相を呈してきたものの、決着がつきません。両国の境界を淮河と定めることに利害の一致をみた秦檜と撻懶による、政治的な幕引きが行われます。中原で金に搾取される漢民族のために領土奪還を掲げた岳飛の「盡忠報国」の志は、このまま潰えてしまうのでしょうか。

梁山泊は、南宋と金の「和約後」の準備を進めています。金は領国内の独立勢力を許容できないであろうとの想定のもとに、軍の若返りを進めるとともに、貿易圏の拡大に務めているようです。多くの部下を死なせたことから立ち直っていない韓成は耶律大石と顧大嫂が治める西遼の西端一帯の統治を命じられ、張朔は日本に赴いて奥州藤原氏接触。南方へ向かった秦容はついに甘蔗糖の精製に成功を収めました。

宣凱に全てを伝え終えた智多星・呉用が、ついに亡くなります。最後の言葉は「岳飛を救え」でした。しかし、死の直前に語った行者・武松の思い出にはどのような意味があるのでしょう。

南宋への帰順を拒み、独立軍閥であり続けようとする岳飛を待ち受けている運命は過酷なものです。梁山泊は、時代に先行した自らの存在と岳飛を救うことができるのでしょうか。あちこちに撒かれた種が、終章に向かって収斂し始める日も近そうです。

2014/1