りぼんの読書ノート

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岳飛伝 6(北方謙三)

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独立軍閥を率いて「対金主戦論」を貫き続ける岳飛と、「対金講和論」のもとに岳飛南宋軍の総帥として取り込みたいと願う秦檜は、ついに歩み寄ることができません。互いの主張を認め合いながらも、両者は根底のところで相容れないものがあるのです。ついに岳飛に死罪を言い渡す秦檜。

しかし一方で、「岳飛を救え」との呉用の遺言を受けた燕青と致死軍が動き始めていました。燕青が追っていた南宋皇太子の正当性を揺るがす物証は、秦槽を動かすのみならず、李師師の率いる青蓮寺を眠りから覚まします。

梁山泊の生命線である物流と市場に影響を与える動きが出始めました。ひとつは国家の保護の下に動く「重商主義」の台頭。簫珪材の息子である簫炫材が、金の政商として動きを活発化させています。もうひとつは韓世忠のもとで急速に力をつけてきた南宋水軍の存在。奥州藤原氏と交易する梁山泊に対抗して、博多航路で日本との交易を始めようとしています。

秦容のもとで開拓が進む南方では、パガン朝(現ミャンマー)との接触が行われました。南宋からは大理国(現雲南省)のその先にある地域ですが、南方をめざす秦檜との間に軋轢が起こる可能性がありますね。一方で、モンゴルが力をつけてきているようです。岳家軍の解散によって講和がなった南宋と金国の平和も、永続しそうにありません。巨大なスケールの中国史再構築の試みは、どう進んでいくのでしょうか。

2014/6