りぼんの読書ノート

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岳飛伝 10(北方謙三)

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呼延凌率いる梁山泊軍と対峙していた兀朮の金国軍八万騎は、国内の麦不足によって起き始めた民衆蜂起によって戦線を維持できなくなっていきます。もちろんこれは、梁山泊統轄・宣凱の深謀遠慮の成果です。しかし一方の南宋では、宰相・秦槽に米の操作を見破られて、陳家村の蔡豹と陳麗華に魔手が迫ります。

張朔の梁山泊水軍と韓世忠将軍の南宋水軍による長江制圧戦は、梁山泊が圧勝。さらに項充の水陸両用部隊が南宋の造船場を炎上させますが、長江流域の物流拠点が南宋軍につぶされたため、痛み分けのようなものでしょうか。

南方では、大理に駐屯していた五万の辛晃軍がついに動き出します。秦容と岳飛は連携して南宋軍を撃退しますが、要塞を築きながらじっくりと南進するという南宋の作戦には、手を焼くようになるのかもしれません。そんな中、燕京を逃れた簫炫材を連れて南方を訪れていた王貴と、岳飛の娘・崔蘭が結婚。商隊を簫炫材の轟交買に引き継いだ王貴は、ついに聚義庁に入ります。物流による民の生活向上への願いと、前衛が持つ「志」は、このようにして結びついていくのでしょう。

虚実を入り交えた物語は、まだまだ続いていきそうです。史進に討たれそうになりながら生き延びた胡土児が、どのように展開に関わってくるのか、気になります。

2015/5