りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

岳飛伝 16(北方謙三)

イメージ 1

「ラス前」の第16巻では、最初から最後まで激しい戦闘が行われます。北の金国内では、海陵王と兀朮の軍に対して梁山泊軍が対峙。南宋では、首都・臨安を目指す岳家軍と秦容軍の前に、ついに程雲が姿を現します。南宋水軍は南方の小梁山を狙う一方で、梁山泊・致死軍郡は、南宋の造船所を急襲。

中華を越えたあちこちで激しい戦闘が続くものの、もはや戦闘から新しい時代が生まれてくることはないのでしょう。強力な軍によって維持される古代国家という枠組みは既に壊れ去り、物流すなわち国民経済の統制に意味がある時代になっているのです。

そしてそれは、百八星の最後のひとりとなっていた史進の退場へと結びついていきます。もちろん著者は華やかな退場劇を準備してくれましたが、大将を討ち取れば勝てるという戦ではないことは、その前に告げられています。

その意味では、岳飛、秦容、呼延凌らも、時代遅れの存在になってきているのかもしれないのです。そう考えると「梁山泊が勝利すること」の意味が理解できそうに思えてきますが、そこは深く突っ込まずに最終巻を待つことにしましょう。

南宋の宰相・秦膾の病は篤そうです。一方で、楊令の息子で兀朮を養父に持つ胡土児は、中原どころか金国からも去ろうとしているようです。彼を眩しそうに仰ぎ見た蒙古の少年は、チンギスハンなのでしょうか。2人の年齢差は30歳ほどと推測しているのですが・・。いよいよ次の巻で、壮大な物語が完結するのですが、南方の戦闘も忘れずに描いてほしいですね。

2017/1