りぼんの読書ノート

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岳飛伝 17(北方謙三)

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水滸伝(全19巻)楊令伝(全15巻)に続く岳飛伝(全17巻)』が、ついに完結しました。2000年から2016年にかけて綴られた、一大叙事詩「大水滸」はどのように締めくくられたのでしょうか。

史実は、本書で著された1260年代以降、金では世宗・南宋では孝宗と名君が立ち、モンゴルに滅ぼされるまでの間は安定した時代が続いたことを示しています。著者の大構想は、そこに至るまでの道筋を示すことにあっただけでなく、将来のモンゴルによる支配ですら、その延長線上に飲み込んでしまったようです。そして梁山泊は、独立勢力としての使命を終えることになるのです。

ともあれその前に、国家という概念を根底から覆してしまおうとする梁山泊と、既存国家を守ろうとする南宋・金との大戦闘に決着をつけなくてはなりません。岳飛南宋の程雲・秦檜との戦闘に決着をつけて抗金に向けて北上し、北方では呼延凌と秦容が兀朮なきあと金軍と死闘を繰り広げます。南方での張朔と夏悦による水戦、南進した許礼に対する留守部隊の防戦は、おまけのようなもの。

またも死ねなかった史進が子午山で、長く致死軍を率いてきた候真と酒を酌み交わす場面で、壮大な物語に幕が引かれました。金を去った胡土児はモンゴルへと向かいます。「大水滸・全51巻」に続く新しい物語を期待しているのは、私だけではないでしょう。

2017/4