りぼんの読書ノート

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岳飛伝 11(北方謙三)

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金の兀朮が率いる10万の騎馬軍が、ついに梁山泊の呼延凌軍と全面対決。ともに多くの将兵を失う激戦が繰り広げられますが、またしても決着はつきません。もはや、戦闘で何かの決着がつくような時代ではなくなっていることを象徴しているかのようです。

南方では、辛晃の南宋軍を退けた岳飛の岳都と、秦容の小梁山の連携が深まっていきます。互いに北進の意志を確認し合った2人は、戦機を測っていくことになるのでしょう。梁山泊との共闘を誓いつつ、国家とは一線を画した商業・物流機能を有する簫炫材の轟交買にとっても、南方の甘蔗糖は重要な品目になっています。もはや国家の動脈となった物流は、南宋からも金からも独立性を保てるのでしょうか。

西方では、15万もの蒙古軍が西遼に侵攻してきます。執政となっている顧大嫂は、韓成や土理緒らに激を飛ばして蒙古軍を粉砕。ひとまずは国家存亡の危機を乗り越えるのですが、時間を稼いだにすぎないことは歴史が証明しています。しかも、蒙古の背後では、南宋が糸を引いているのです。

しかし次に歴史が大きく動くのは、金国内なのです。致死軍の侯真は北でなにかが起きそうだと統括・宣凱に報告。太子・海陵王は、独自に禁軍を増強し、不気味な動きを見せるのですが・・。

虚実入り混じった物語は、いよいよ佳境に入っていくようです。海陵王の南進から乾道和約に至る史実は、梁山泊岳飛とどにように絡んでいくのか。著者の思うゴールはどこにあるのか、気になってきました。

2015/11