りぼんの読書ノート

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二流の人(坂口安吾)

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坂口安吾さんが今年の大河ドラマの主人公である黒田官兵衛のことを書いていたのを思い出して、再読してみました。「秀れた知略を備えながら二流の武将に甘んじた」というのが黒田官兵衛に対する著者の評価ですが、ではなぜ彼が二流なのでしょう。

それを探るには、著者が「一流」としている人物との対比を見るのが早そうです。勝者となった信長、秀吉、家康はもちろんですが、面白いのは敗者であった石田光成を一流としていること。才気煥発な知恵者に過ぎなかったも光成は、武断派の襲撃を避けるため家康の屋敷に単身飛び込んで以後は「一流の人物となった」と評価されています。つまり「一流の人」とは「創造者」であり、「天の時を感じ取って、己の魂を賭ける」ことができる人物でなくてはならないというのですね。

一方で黒田官兵衛は、あらゆる面で優れているにもかかわらず、成否を見極められないと勝負を降りてしまい、自分の成し遂げようとしていたことをあっさり捨て去る人物だったというのです。秀吉の天下取りの最大功労者でありながら秀吉に猜疑心を持たれた途端に隠棲してしまい、関が原の裏で九州を統一して天下を目指す狙いを持ちながら、関が原がたった1日で収束してしまうと家康に全てを差し出してしまう。補佐役に徹しているわけでもない点に、悲しさを感じますね。

本書は、村重の反乱の時に官兵衛を幽閉したのが小寺氏であったなど、事実関係で不正確な箇所もあるのですが、安吾流の独特の人物論で戦国末期を読み解いた、痛快な作品となっています。

2014/6再読