りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

介護退職(楡周平)

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冒頭の一文が、本書の全てを語っています。
大学で東京に出るのは自然なことだった。そのまま職を東京で求めることもまた、自然なことだった。田舎に両親を残すことなど、気にも留めなかった。父母がやがて老いる時のことなど考えもしなかった。
だけど今にして思う。親子の絆が断ち切れぬものである以上、その時の事に備えておくべきだったと・・。
まさに身につまされます。

総合家電メーカーの国際事業本部で北米事業部部長を務める唐木は50歳。父親は数年前に亡くなっており、故郷の秋田で独り暮らしを続ける76歳の母親が雪かき中に骨折で入院。リハビリ期間だけとのことで東京で同居をはじめますが、母親は認知症の症状を見せ始めます。

生活に汲々としている弟夫婦は頼りにならず、中学受験を終えた息子を持つ妻に全てがかかってきますが、彼女もまたストレスで倒れてしまいます。母と妻のダブル看護のために仕事に支障が出始め、役員レースを外れて閑職についた唐木は退職を決意するのですが・・。

「身内の介護は労働ではなく、義務である。代償も生じる」と悟った主人公の反省も他人事ではありません。本書のラストはかなり甘いけれど、こんなラッキーなことを普通は期待できるはずもありませんし。

繰り返しますが、本書のテーマはまさに身につまされます。

2011/10