りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

銀行総務特命(池井戸潤)

イメージ 1

不祥事だけではなく本書も、「花咲舞が黙ってない」の原作だそうです。主人公は異なっていますが、銀行で起こる「不祥事」を内部捜査する小説ですから、テーマはほとんど一緒です。本書で活躍するのは、総務部内の特命担当である指宿修平と、助手を務める総合職エリートの唐木怜。

「漏洩」 銀行の融資避妊で倒産に追い込まれた中小企業社長の復讐は、かつて取り込んだ銀行員を利用しての情報漏洩でした。

「煉瓦のよう」 裏金を受け取っていた、現場一筋のたたきあげバンカーが自殺。しかしそれは、誰かを庇ってのことだったようです。

「官能銀行」 女性行員が顔を隠してAV出演。それは、一般職女性を使い捨てにするだけでなく、弄んだ男を道連れにしる復讐でした。この作品から、指宿の助手役が鏑木から唐木怜に代わります。

「灰の数だけ」 支店長の妻子を誘拐した犯人は、倒産した工場の社長でした。目的は何なのでしょうか。

「ストーカー」 行内のストーカー事件を利用して融資不正を隠ぺいしようとした支社長のたくらみは、意外なところから破綻していきます。

「特命対特命」 巨額損失を出したトレーダーの不正を見破れなかったのは指宿の落ち度だったのでしょうか。総務部特命を面白く思っていない人事部が特命を派遣して、指宿を陥れようとします。

「遅延稟議」 支社長連続傷害事件のカギは、案の定、遅延稟議のせいで倒産した企業にあったのですが、犯人は銀行内の担当者でした。

ペイオフの罠」 倒産寸前の企業への投資勧誘や、ペイオフ直前の銀行への預金勧誘を利用して私腹を肥やす者は許せません。唐木怜が単独捜査。

どんな業種の会社でも「不祥事」の本質は変わりませんが、お金を直接扱う銀行では、恨みが生まれやすいのかもしれません。それと、技術や商品の競争が起きにくい業種ですから、パワーは内部抗争に向か安いのかも・・。

2014/6