りぼんの読書ノート

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あなたが最後に父親と会ったのは?(ブレイク・モリソン)

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イギリスの作家による亡き父の回顧録ですが、すっかり泣かされました。父親との別れを描いた作品には弱いのです。

ヨークシャーの田舎で開業医を営んでいたあきれるほど人間的な父親は、ケチで、ズルくて、浮気もして、何でも自分の思い通りにしたがる小市民。でも、家族を愛する心は人一倍強かった人物でした。

そんな父親の思い出と、末期癌にかかって死の床についた現在の父親への思いを交互に書き綴る著者の気持ちが、痛いほどに伝わってきます。それは、書き記すことによって「父の死を受け止めよう」という思い。

それもそのはず、本書は作品として書かれた文章ではなくて、予想以上に父親の死に衝撃を受けた自分自身に対するセラピーとして書いたという、日記やメモからなる断章を纏めたものだというのですから。

「あなたが最後に父親と会ったのは?」という問いは、個人的なものから普遍的なものへと広がっていきます。ずっと記憶に焼き付けておきたい、老いる前、病む前の「父」と最後に会ったのはいつだったのか・・。著者は答えを見出すのですが、同じ問いは自分にも返ってくるのです。

2011/10