りぼんの読書ノート

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あの素晴らしき七年(エトガル・ケレット)

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イスラエル人の若い作家が、人生の特別な7年間を綴ったエッセイです。息子の誕生から父親の死に至る7年間とは、著者が「父でもあり息子でもあった」特別の期間なのです。

そういうエッセイなので、家族のことに関わるエピソードが多いのは当然のこと。次第に成長していく息子がもたらす笑い。息子の将来についての妻との意見の食い違い。癌を宣告されてもユーモアと希望を失わない父親。タイで象使いになった兄の話や、正統派ユダヤ教に目覚めた姉の話。

しかし、著者の住む国はイスラエルなのです。両親が語る昔話はポーランドでのホロコースト。妻との論争は息子を徴兵に応じさせるかどうか。講演で海外に出ると自分がユダヤ人であることを意識させられてばかり。そして、本書は息子が生まれた日にテロ事件が起きた話で始まり、ミサイル飛来を告げる警報が響く道路で7歳になった息子と一緒に地面に伏せる話で終わるのです。

そういえば、著者の突然ノックの音がは、深刻な話題をコミカルに語る物語が詰まった短編集でした。自分と家族の日常を題材にしたエッセイも、同じ雰囲気に満ちています。

2016/12