りぼんの読書ノート

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ラシャー(アン・ライス)

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『魔女の刻』の続編というより、本編の物語に決着をつける最終巻です。300年に渡ってメイフェア家の魔女たちにとり付き、ついに肉体を持った悪霊ラシャーとともに姿を消したローアン・メイフェアは、どこにいるのか。

残された夫マイケルの前に、歴代の一族で唯一「魔女」の力を持った男性、ジュリアンの霊が現われてラシャーについて語り、不思議な予言を残します。ラシャーと深い関係になって、妹キャサリンに娘を産ませ、その後も子孫の魔女たちと近親相姦を繰り返すことで一族の力を保ってきたジュリアンは、ラシャーが人間とは異なる種族で、危険な存在だと認識していたのです。このあたりは魔女の刻 2.メイフェア家の魔女たちと裏表の物語。

一方、ラシャーは死に物狂いで種族を増やそうとしています。母ローアンを孕ませ、さらに次々とメイフェア一族の女性たちを襲うのですが、異種族の出産に耐えられる力を持つ魔女はローアン以外にはいないようで、皆、次々と無惨な死を遂げていきます。さらに、ここにきてラシャーを保護するかのような不可解な動きを見せる超常現象研究団体の「タラマスカ」。

ついにラシャーとの最後の対決に臨んだマイケルの前で、ラシャーが語る執念の種族タルトスの歴史は、さらに意外なものでした。ラシャーが生まれたスコットランドのドネレースの峡谷に継承されていた異種族の血とは、いったい何だったのか・・。

続巻の『タルトス』という作品があるそうですが、未訳です。でも、ローアンとマイケルの物語には決着がついたようですので、ここまでで十分でしょう。楽しめました。^^

長い物語の締めくくりに、物語の骨格となる予言を載せておきましょう。
いとも悪しき者立ちて、いとも善きものたる二者のはざまに
魔女は揺れ動き、かくて扉は開かれん

彼らつまずきて苦悩と苦痛に悩み、いまだ学ばずして流血と恐怖を招く
いまや嘆く者らの谷間と化せる、このエデンの春は災いなるかな

傍らで見入る者らに気をつけよ 博士らを家に入るることなかれ
悪魔をして過去を語らせ 天使の力を鼓舞せしめよ
死者を帰り来させて立ち会わしめよ 錬金術師を敗走させよ

人にあらざる肉に死を 単純にして酷き武器をば信ぜよ
知恵に達せんとして死にゆくとき 悩める魂は光明を求むるならん

子どもにあらざる赤子を滅ぼせ 汚れなき者にも情けは無用
さもなくばエデンは春を迎えず さもなくばわれらが統治は終わりを告げん
2011/10