りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

はむ・はたる(西條奈加)

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「大江戸もどきファンタジー」から人情時代小説作家へと転身(?)した西条さん、上手になっていますけど、その分、迫力が薄れるのは仕方ないのでしょうか。

本書は「大江戸BOP小説」ともいえる烏金の続編で、前作の主役・金貸しの浅吉がまっとうな商売につけた孤児たちが、やはり浅吉の助力で家計が立ち直った武家の長谷部様の次男・柾の敵討ちに関わる物語。一作ごとに語り手が変わる連作短編となっていますが、主役は孤児たちのリーダー、勝平ですね。

あやめ長屋の長治:語り手は年長の玄太。いつも孤児たちをからかう嫌味な長治が事件に巻き込まれてさらわれます。口うるさく手が早い両親を嫌っていた長治ですが、本当は愛されてるんですね。玄太や勝平から見ると羨ましい限りです。

猫神さま:語り手は人殺しの父親を持つ三治。おのぶが奉公先で盗みを疑われたのは父親が盗みを働いたことがあったから。商家の家庭内トラブルを見抜いた三治と勝平は、おのぶの疑惑を晴らします。繭玉問屋の守り神はネズミを遠ざけるネコなんですね。

百両の壺:語り手は、浅吉の後を継いで金貸しのお吟婆さんの手伝いをしている天平。長谷部様の後継ぎ・佐一郎が商人になりたいといって天平の見習いにつくのですが、やはり武士の商売。天平と勝平が、借り手に因縁をつける浪人貸しの陰謀を暴きます。

子持稲荷:語り手は孤児たちのサブリーダーだった年長の少女・登美。甘やかされて育った仕出し屋の息子・由治郎が嫌う厳しい義母がゆすられているようです。登美は、秘密を暴き出し真実を由治郎に告げるのですが、どうやら甘ったれ坊主に惚れられた?

花童:語り手は無口な美少年ハチに惚れている伊根。ハチが離れずに世話をしているハナが本当の妹ではないと知って激しい嫉妬を抱くのですが、ハナが行方不明に・・。言葉を話さないハナは実は賢い子でした。2人はいい友人になれそうです。

はむ・はたる:語り手は孤児たちのリーダーで13歳の勝平。旅からふらりと戻った長谷部様の次男・柾さまは、孤児たちと仲良くなって何かと面倒を見ているのですが、彼には敵討ちの相手がいたのです。剣の師匠の後妻に入り、師範代をそそのかして師匠を殺害させた美貌の悪女・お蘭をようやく見つけ出した時、彼女は病に伏して先が長くない状態だったのです。果たして柾の敵討ちは・・。

人情小説としてはよくできていますが、『烏金』で見せてくれたような、現代感覚を時代小説に持ち込む魅力は薄れているようなのが気になります。普通の時代小説作家にはなって欲しくありませんので。

2011/3


P.S.
浦安の図書館はずっと閉鎖中。勤務地の図書館に登録して本を借りてきました。