りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006/7 ケッヘル(中山可穂)

7月は、たくさん読んだのに、「これ」という大当たりはなかったな。角田光代伊坂幸太郎五十嵐貴久などの売れっ子作家の本も、以前に読んだ作品ほどインパクトを感じさせてはくれませんでした。イシグロさんの2冊だって、先月の『わたしを離さないで』には及ばない。はじめて読んだ中山可穂さんの本を「新鮮感」で1位にしてみました。
1.ケッヘル (中山可穂)
「ケッヘル番号が、わたしをこの世の果てまで連れてゆく・・」。モーツァルトの音楽に取り憑かれた男と、過去の亡霊から逃げ続ける女が出会って、復讐のドラマが幕を開けます。後半で矛盾もあるけど、最後まで落ちないテンションの高さはお見事です。

2.日の名残り (カズオ・イシグロ)
古きよき時代のイギリスを振り返る「執事」の一人語り。でも、名家に仕えた執事の誇りが、彼に本心を語らせていないのでは? 彼の本心にまで踏み込んだときに、より大きな感動に包まれます。イシグロさん得意の、「信頼できない語り手」の手法ですね。

3.ドラママチ (角田光代)
どこかで、立ち止まってしまったままでいる女たち。皆、そこから、一歩を踏み出すための「何か」を待っています。でも、待ってるだけでは変わらないこともわかってる。カッコ悪くても、ちょっとズレていても、ジタバタするだけでも、自分のできるやり方で動き出してみる、30代の女性たちの物語。

4.輝く日の宮 (丸谷才一)
源氏物語』の1巻として実在したかもしれない「輝く日の宮」の巻。想像の翼を自由に羽ばたかせ、閉鎖的な学会と闘う、魅力的な安佐子。彼女を、紫式部とクロスオーバーさせることによって、丸谷さんは『源氏』の失われた1巻を再現までしてしまいました。^^

5.交渉人 (五十嵐貴久)
コンビニ強盗に失敗して、人質をとって病院に立て籠もった犯人たち。こんな「ど素人」の籠城犯なんて、手玉にとってしまう交渉人。でも、簡単に解決するはずの事件なのに、何かおかしい。事件の意外な真相と、意外な真犯人が、ラストで明らかになります。




「ハリポタ・シリーズ」は、7巻まで完結してから評価するべきかな。「ロード・オブ・ザ・リング」だって、アカデミー賞を取ったのは、第3部「王の帰還」ですもんね。^^

2006/8/3