りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2006/6 わたしを離さないで(カズオ・イシグロ)

読書ノートをつけはじめてから2年が経ちました。こんなにたくさん読んでいたことに、自分が驚いています。もっと早く始めていれば良かったな。

6月は「有限の人生」を意識させてくれる本が上位に来ました。必要なのは「誠実に日常と向き合う勇気」ということでしょうか。
1.わたしを離さないで (カズオ・イシグロ)
不思議な施設で一緒に生まれ育った、友人たちを介護するキャシー。彼女もやがて、介護人としての役目を終えて、提供者となるのです。作者の伝えたいことは、明快で力強い。「人は思っているよりずっと短い間に愛や友情を学ばなければならない。いつ終わるかもしれない時間の中で、それらをいかに経験するか」。

2.終末のフール (伊坂幸太郎)
「8年後の小惑星衝突で地球は滅亡」と発表されてから5年後。普通の人たちは「あと3年」をどう生きるのでしょうか。8日だろうが、8年だろうが、80年だろうが、生命には終わりがある。「その時」を意識して生きることと、全く自覚しないで生きることと、どちらが幸せなのでしょう。

3.匂いたつ官能の都 (ラディカ・ジャ)
人並みはずれて鋭敏な匂いの感覚を持つインド系の女性・リーラが、移民として体験する、エスニックな都会「パリ」のもうひとつの姿。スパイスの匂い、ワインの香り、薔薇の芳香、男性の体臭・・。でも、リーラが耐え難かったのは、自分の生き方を許せない時に、彼女の身体から立ち上るように思える架空の悪臭だったのです。

4.漢方小説 (中島たい子)
薬だけじゃなくって、本人の気持ち、友人の思いやり、恋人の存在。それらが一緒になって、心と身体のバランスは回復するのでしょう。辛いPMS(月経前症候群)とも、上手につきあわないといけない。女性の身体感覚を上手に表現してくれる中島さんの佳作です。

5.若者殺しの時代 (堀井憲一郎)
現代は、若者であることが不利である「若者殺しの時代」? 80年代に始まった、若者をターゲットにしたコマーシャリズム。その実態と行き着く先は? 「何でも調べる」堀井さんのレポートには説得力がありますよ。





2006/7/5