りぼんの読書ノート

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リリアン(エイミー・ブルーム)

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1924年、ロシアのポグロムユダヤ人迫害)によって両親と夫を惨殺され、一人娘も失ったリリアンはボロボロになってニューヨークにたどり着きます。まだ若くて美しいリリアンは、経営する劇場のお針子として雇われるのですが、やがて劇場経営主の父と俳優の息子の双方の愛人となって、貧しい移民生活から這い上がることができました。

ところが彼女の元に「死んだはずの娘ソフィーは叔父夫婦に助けられ、一緒にシベリアに追放されて生きている」との話がもたらされます。誰もが反対する中で、全てを投げ打って、ひとりシベリアを目指すリリアン

もちろん半端な旅ではありません。大陸横断鉄道の車掌たちの世話になってようやくたどり着いたシアトルでは、黒人娼婦に身ぐるみはがされて、ポン引きに捉えられる。カナダでは女子矯正施設に送られて、数ヶ月間の足止めを食らってしまう。

しかし彼女はあきらめません。アラスカまで延びる電信線と信号所をたどって、極北の地を歩き続けます。そこまで行けば、漁船を見つけてベーリング海峡の横断だって可能なはず。娘ソフィーはシベリアで生きていると信じて・・。果たしてリリアンの旅は・・。

黒人娼婦ガムドロップや、女子矯正施設で出会ったチンキーなど、旅の途上でリリアンが出会った人たちの「その後」まで書き込まれているのがいいですね。彼女の旅に「救世主の受難」のイメージを重ね合わせようとしているのでしょうか。いや、もっと単純に、エンディングとのバランスをとるための努力のようにも思えます。劇的な展開だった割に、ラストはちょっとスカされてしまいましたので・・。

2009/9